デング熱対策法政府の取り組み

デング熱の国内感染に対応するため、さまざまな取り組みが行われました。

厚生労働省、医師向けのガイドライン作成

資料●デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き(第1版)
出典:国立感染症研究所

厚生労働省は自治体向けに、デング熱国内感染例発生時の対応・対策の手引きを作成し、配布しました。また、デング熱に感染した人の中には、解熱剤の服用後に重症化するケースがあったことが明らかになったことも踏まえ、医療機関に診療ガイドラインを配布し、解熱剤の使用に注意するよう呼びかけています。このガイドラインによって、来年以降は今まで見過ごされてきたデング熱患者もきちんと診断がくだされ、患者数の届出がさらに増える可能性があります。

都が東京五輪に向け、対策を本格化

代々木公園で蚊の駆除作業をする作業員

デング熱の流行中心地であった東京都は、専門家らによる「都蚊媒介感染症対策会議」を開き、2015年以降の感染対策について協議し報告書にまとめました。

報告書は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、「東京から蚊が媒介する感染症のリスクを減らしていくことが必要」と指摘。その上で対策を、発生状況に分けて明記。まず感染者がいない時期は、予防策として蚊が発生しやすい水たまりの除去などを実施。次に患者が出た時は、蚊の駆除対策を速やかに実施し、また検査による患者の早期発見などから封じ込めを急ぎ、感染の拡大及び伝播を抑制する等の内容を盛り込んでいます。

検査キットの国内承認、保険適用を求める

さらに東京都は国に対して、デング熱の早期発見のため、迅速診断キットの承認・保険適用などを求めています。現在、デング熱の診断については、保険診療で行うことができる検査がなく、また迅速キットも国内未承認のため、流通量も少なく、多くの患者を検査できる体制が整っていません。もともと、国内感染例が約70年なかったことから、多くの医療機関では、海外渡航歴のない患者にデング熱の検査を行う意識もなく、今後、国を挙げての対策を行う必要があります。

海外・対策事情

デング熱の流行は世界に広がっています。海外ではどんな対策が行われているのでしょうか。

シンガポール:水たまり放置は罰金

シンガポールでは、デング熱が発生した家庭には調査員が派遣されます。そこで蚊の発生原因となる水たまりがないかをチェックし、水たまりの放置がわかると、最大で40万円の罰金となるそうです。こうした対策により、2005年にはピークだった患者数が2006年には、4分の1になりました。しかし、その後また発生数が増えてきており、政府はさらなる強化策として、医療機関には患者が発生した場合は、24時間以内にファックス又はEメールで報告するよう求めたり、ワクチン開発に積極的に乗り出しています。

ブラジル:「遺伝子組み換え蚊」の放出作戦

2016年に夏季オリンピックの開催が決まっているブラジルでは強力なデング熱対策として、人間に害を及ぼす前に自滅する「遺伝子組み換え蚊」を国内に大量放出する計画を立てています。同技術はイギリスの企業が開発したもので、遺伝子を組み換えることで、致死遺伝子を持つようになったオスの蚊の子孫は、成虫になる前に死滅するというものです。実際にブラジルの特定地域で行われた実験では、野生の蚊がほぼ全滅したとのことです。

スリランカ:虫よけ剤配合のインクで新聞発行

スリランカの新聞「Mawbima」が、広告会社と共同で虫よけ剤(天然のシトロネラ油)配合のインクで印刷した新聞を発行するキャンペーンを実施しました。“虫よけ新聞”を発行した日は、朝刊が10時に売り切れ、売り上げは30%も伸びました。また同キャンペーンでは、人々の意識を高めるために、虫よけ剤でコーティングしたポスターをバス停に貼るなど積極的に予防を呼びかけました。