デング熱とは日本で、世界で、デング熱が大流行!

2014年、日本で70年ぶりの大流行

2014年、約70年ぶりにデング熱の国内感染がみつかり、大騒ぎになりました。日本でのデング熱の発生状況はどうだったのでしょうか。

全国で160人が感染!

2013年までは輸入感染。2014年に新たに国内感染(赤)が追加されました。ただし、2013年には日本とドイツ間を直行便で往復した外国人におけるデング熱症例の報告があります。
資料●デング熱報告患者数の推移
出典:国立感染症研究所

2014年8月、国内で女性がデング熱に感染したというニュースが飛び込んできました。デング熱は、蚊によってうつる感染症で、東南アジアや中南米で流行しています。海外渡航者の感染は毎年200人ほど確認されていますが、この女性には海外への渡航歴がなかったことから、国内で感染したと確認されました。国内感染は70年ぶりと大騒ぎになりました。その後も、感染者が相次ぎ、2014年の感染者数は160人と報告されています(2014年10月31日時点)。

 国内でデング熱が猛威をふるったのは、戦争中のことでした。太平洋戦争で戦場となったのがデング熱の流行地域だったことから、日本もその影響を受けたのです。1942年から1945年にかけて、神戸・大阪・広島・呉・佐世保・長崎などの都市でデング熱が流行し、患者数は20万人にものぼったそうです。

“ホット(感染)”スポットは、緑の多い公園周辺

資料●デング熱発生場所
出典:厚生労働省

デング熱に感染したと考えられている場所は、東京都渋谷区の代々木公園や東京都新宿区の新宿中央公園などの公園でした。

患者の多くは、代々木公園およびその周辺において蚊に刺された人で、最近の海外渡航歴はありませんでした。代々木公園は都内5位の広さをほこる公園。うっそうとした森林をもつ明治神宮に隣接し、噴水や水回廊があります。こうした公園の中は蚊の好む場所が多いと厚生労働省は推察しています。

代々木公園以外の場所で感染したと考えられる事例もあり、各施設では、利用者への注意喚起や立ち入り制限、蚊の調査・駆除などが行われました。

2次感染による拡大の可能性も。

前述の通り、2014年はデング熱の国内発生例が160例報告されました。患者は、北は北海道から、南は高知まで全国各地から報告されましたが、これらの患者の海外渡航歴はなく、大半は東京都渋谷区にある代々木公園またはその周辺地域を訪れていました。代々木公園でウイルスに感染した蚊が大量発生し、公園を訪れた人がこれらの蚊に刺されたことが国内感染の主な原因と推測されています。しかし、患者の中には千葉県千葉市でみつかった男性のように感染場所が特定できていない例もあります。この男性は、あまり遠くに外出することはなく、市内から出ることもなかったそうです。

通常、ウイルスを運ぶ蚊の行動範囲は50~100メートル程度とされています。このことから、媒介蚊の生息場所が、感染者を通じて複数の場所に広がり、2次感染が起こった可能性が考えられます。デングウイルスは感染しても症状の現れない「不顕性感染」が多いことも知られており、感染者はもっと多数存在していたと考えられます。不顕性感染者からウイルスが運ばれていたのかもしれません。

資料●デング熱感染者数(2014年10月31日現在)
出典:国立感染症研究所
蚊を媒体にして感染し、ヒトからヒトへと感染することはない

公園閉鎖!イベントが続々と中止に 虫よけ剤の品切れ続出!

立ち入り禁止の規制線が張られ、厳戒ムードの代々木公園

代々木公園やその周辺を訪れた人にデング熱の流行が広がりました。代々木公園は、イベントなどで多くの人が集まることや、ウイルスを媒介する蚊が生息しやすいという条件が重なり、感染の舞台となったようです。公園内の蚊にウイルスがみつかると、公園は封鎖され、蚊の駆除作業が行われました。公園や公園周辺で行われるイベントも続々と中止されました。

このようなデング熱の感染報道後、代々木公園周辺の複数の店舗で、虫よけ剤を買い求める客が相次ぎ、売り切れるドラッグストアも出ました。例年なら虫よけ剤や殺虫剤の売れ行きは減る時期ですが、首都圏では、虫よけ剤などの売れ行きが前年の同時期と比べ2倍以上の店舗も。殺虫剤を増産するメーカーもでました。

世界中で流行!過去50年で30倍に

日本ばかりでなく、世界的に見ても、最近の数十年間で、デング熱にかかる患者数が劇的に増加しています。世界の状況をみてみましょう。

地球上、25億人に感染リスク

資料●世界での発症状況
出典:厚生労働省検疫所「デング熱の流行状況」のデータを中心に作成。

2次感染による拡大の可能性も。

デング熱を引き起こすデングウイルスは、現在、中南米、東南アジア、西太平洋地域の120カ国に常在し、全世界の人口の40%以上の25億人が感染リスクにさらされています。発症件数は過去50年で30倍以上と劇的に増えています。2013年には国際研究チームが、1960年から2012年にかけて世界各地で起きた発生のデータを解析しました。その結果、年間3億9000万人が感染し9600万人が発病していると推定しています。入院を必要とする重症型のデング熱は、推定毎年50万人。その大部分は子供で、重症型のデング熱を発症した人の、約2.5%が死亡しています。国際交流はますます増加しており、また地球温暖化により、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどウイルスを媒介する蚊の生息域も拡大しています。アフリカ、中近東、南アジアなどにも発生が広がってきており、ヒトスジシマカが生息する日本でも、以前から発生の可能性が指摘されていました。

中国、台湾の都市部で感染者が増加

デング熱は主に、熱帯及び亜熱帯地域でみられます。そのほとんどが都市部ということも特徴的です。2014年には、アジアの中でも、特に中国と台湾で感染が激増しました。中国では、45,129人と前年比78%の増加、台湾では、11,130人と前年比62%も増加し、いずれも過去10年で最多人数です。中国での感染拡大の理由としては、高温多湿の気候とデング熱感染地域を旅行した人々の流入などが考えられます。特に感染者が増加した広東省広洲市は、北京、上海に並ぶ中国三大都市の一つ。北京や上海よりも南に位置し、経済成長の著しい商業都市です。台湾で感染が最も深刻なのも、台湾三大都市の一つである高雄市でした。そして日本でも感染の中心は東京です。グローバル化を背景に、アジアの都市部がデング熱の脅威にさらされはじめています。