デング熱とは基礎知識

デング熱の特徴や症状などをまとめました。

どこにでもいる“ヤブ蚊”がウイルスを媒介

資料●ヒトスジシマカ
出典:国立感染症研究所

デング熱は蚊が媒介するウイルス感染症です。ウイルスを持っている蚊は、ネッタイシマカやヒトスジシマカなどで、ネッタイシマカは主に熱帯地方にいる蚊で日本にはいません。一方ヒトスジシマカは、日本のほとんどの地域(青森県以南)での分布が確認されています。よく耳にするヤブ蚊の代表例がヒトスジシマカであり、その姿を多くの日本人が目にした経験があると言えるでしょう。

蚊が感染した人を刺すと、1週間ほどで蚊の体内のウイルス量が増えます。その蚊に人が刺されると感染するというわけです。人から人へ直接感染することはありません。

発熱後、激しい頭痛、関節痛が特徴

デング熱ウイルスに感染すると、3~7日程度の潜伏期間の後、38~40℃の急激な発熱を発症し、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹が現れます。特に関節などの痛みが激しく、英語ではBreak bone feverと呼ばれるほどです。通常、2~7日で解熱し、解熱とともに発疹が現れます。発疹は治りかけたときに出現します。ただし、症状が出ないこともあり、その割合は50~70%とされています。

病原体であるウイルスは、フラビウイルス科フラビウイルス属に属するデングウイルスです。ウイルスには1~4までの4つの型がありますが、どの型によっても同様の症状が出るので、症状からは感染したウイルスの型はわかりません。同じ型のウイルスに再び感染した場合、一度できた免疫によって軽症ですみますが、異なる型に感染すると免疫が過剰に働き重症化することがあります。重症化したものは「デング出血熱」または「デングショック症候群」と呼ばれ、全身の出血に伴いショック症状に見舞われることもあり、稀に死亡することもあります。

資料●デング熱の一般的な症状の経過
出典: 厚生労働省「デング熱診療マニュアル」

もしもデング熱にかかったら、どうなるのでしょうか。症状や治療についてまとめました。

デング熱症状の特徴:発熱後の発疹

デング熱患者にみられた点状出血
デング熱患者にみられた麻疹様紅斑
資料●デング熱患者の発疹
出典: 厚生労働省「デング熱診療ガイドライン(第1版)」

デング熱の症状は、インフルエンザなどの症状と似ていることもあり、自身では見分けが難しいものです。

症状の特徴としては、発熱から5~7日程度で発疹が出るという点です。初期は単なる風邪だと思っていたのに、このような症状が出た場合、デング熱を疑いましょう。そして医療機関は、血液検査のできる医療機関を選びましょう。なぜなら、デング熱は血液検査によるウイルス抗体の存在で診断が行われるからです。

デング熱は通常、特効薬がないので、対症療法が行われます。解熱剤や必要であれば補液(点滴)による治療が行われます。血中の血小板低下がひどい場合は輸血をすることもあります。

 なお、熱がある間は血液中にウイルスがいるため、蚊を介して他の人に感染する危険があります。

解熱剤は効果なしってホント?

発熱したからといって、自己判断で解熱剤を服用すると、逆に重症化させてしまう可能性があるので注意が必要です。デング熱の治療に解熱剤は有効ですが、どの薬でも服用できるわけではありません。アスピリンやロキソニンのようなサリチル酸系の鎮痛解熱剤は出血傾向を増強する恐れがあります。バファリンルナのようなアセトアミノフェン系の鎮痛解熱剤がすすめられています。

デング熱の語源

「デング」というユニークな名前はどうしてつけられたのでしょうか。さまざまな説がありますが、ひとつに、スペイン語のdenguero(デングエロ)」に由来するという説があります。デングエロは、英語のダンディーを意味します。デング熱にかかると、背中がひどく傷むため、背筋を伸ばして歩く姿がダンディーに見えるからなのだそうです。